コラム

[走れ!自転車天国]ツアー・オブ・ニュージーランド編 その9

ツアー・オブ・ニュージーランド編 その9

フォトグラファーの下城英悟です。ツアー・オブ・ニュージーランド編、今回は「その9」です。

遊びが大事だよ、なんて事をいろんな場面でよく耳にしますし、誰でもよく口にする言葉でしょう。その理由を理論づけるような確かな法則や文献というのは、あまり聞いたこともありません。ですが、これは昔から言われてきたことで、洋の東西を問わず、人間社会に広く浸透した考え方のようです。

なぜそうなのか? 真面目を通しちゃダメなのか?
いきなり何のお話だよってことですが、ツアーの写真を整理していて今回の写真を掘り出した時、ハッとして蘇った感覚、そして思い浮かんだ言葉でした。

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写真の二人は、実はシリアスレーサーです。今回も最終総合順位では表彰者になったような実力者ですが、ツアー・オブ・ニュージーランドには終始ご覧の出で立ちで出走し、皆の笑顔を誘っていました。特別な仮装でも何でもないユルさなのに、笑えてきて、何より楽しそうな本人たち。 最先端のレーシーなカーボンバイクには、フロントバッグならぬ、有りもののフロントダンボールボックスをくくりつけ、マジックで適当な可愛い落書きがしてあります。箱の中には、サイクリストに欠かせない補給のバナナや、途中で拾った木の枝を差し込んで活けていたり、木の実が入っていたり。当初青かった木の枝葉も、大会後半では枯れ木になって、おなじくバナナは黒くなっていて……。さらに某探偵物語みたいなアフロなカツラが表すものは、いったい……?

それが何のためか、一見して何もわからない。自転車で走るにおいて、空力的にもハンドリングにもマイナス要因しかない。しかし、応援があったり、撮影のカメラを見つけると、ニュージーランドの原住民マオリ族伝統の威嚇のポーズで、最高のパフォーマンスを発揮して風のように駆け抜けていきます。さらに面白いのは、誰も見ていない道中は、かなりの運動強度でローテーションしたりしながら、爆進している事実です。

“遊び”を、例えばユーモアなんて言い換えたりもできます。ユーモアは笑いを誘い込み、コミュニケーションを円滑で豊かにもしてくれます。ニュージーランドのシンボル、シダ類の新芽をモチーフにしたジャージでとるマオリのポーズのことや、ダンボールとカーボンの逆説的なしつらえの自転車や、陽気な彼らの笑顔を思い出しながら、彼らがしたかったこと、伝えたかったことはそういうことだったのか! と今更ながら感じた秋の夜長でしたが、もう年の瀬ですね。

前回までの「自転車天国」はこちら
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その8
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その7
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その6
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その5
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その4
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その3
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その2
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その1

プロフィール

下城 英悟(シモジョウ エイゴ)
Photo&Videographer/Director。1974年長野県上田市生まれ。2000年より写真と映像兼務のフリーランスカメラマンとなり、各種制作業務請け負う。2010年、神保町にてスタジオGREENHOUSEを設立。自転車をこよなく愛し、専門誌への寄稿、撮影も多数。

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