コラム

[走れ!自転車天国]ツアー・オブ・ニュージーランド編 その10

ツアー・オブ・ニュージーランド編 その10

フォトグラファーの下城英悟です。ツアー・オブ・ニュージーランド編、今回は「その10」です。

さて、はや10回目を迎えたツアー・オブ・ニュージーランドのレポートですが、自然豊かな南島をスタートし、北島のゴール地である首都ウェリントンに向かって楽しみ、苦しみ走ってきました。そうしてようやく迎えた最終日。前の日にウェリントンに到着した一行は、夜の街に繰り出し、旅の思い出を肴に酌み交わしました。だいぶ飲みましたが、しかし深酒できない理由が厳然としてそこにあったのも事実です。

“負けられない戦いが、そこにある”
どっかで聞いたアレですが、つまりこういうことです。

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最終日ツアー・オブ・ニュージーランドの締めくくりは、なんとガチのクリテリウムレース。
クリテリウムレースとは、主に市街地の公道などで行われる周回レースのことです。欧米では非常に盛んで、最近では日本国内でも盛り上がりを見せているレース形態なので、ご覧になった方もいるかもしれません。ロケーションが、市街地など聴衆が多いところで行われるので盛り上がりは必至です。そのクリテリウムがツアー・オブ・ニュージーランドの最終関門。最終日がガチレースとはなんともかともニクい演出です。さらに演出は加速して、なんとNZの首都ウェリントンの国会議事堂真ん前の特設コースが戦いの舞台として用意されています。国家の表玄関先、いいんでしょうか?

そんな心配は野暮だと、早朝集合してわかりました。国会議事堂前とは思えない寛容すぎる雰囲気。まずポリスメンの姿がどこにも見当たりません。警備員? いたでしょうか、見かけませんでした。ただ緑豊かな庭園と、笑顔のサイクリストと、その家族、そして観客がいるだけです。ここまで走ってきてわかったこの国のおおらかさの本質が、ここでもはっきりしました。とはいいながらもコース周辺は、安全確保の柵がくまなく設置され、しっかりレースモードに整備されています。議事堂前のよく整備された庭園内の道と一般道をミックスしたコースは、ほどよくトリッキーなシケインやS字カーブ、パンチ力の要る少し長めの登坂までもしっかりあり、一周1km強のコースの中に見所がぎゅっと詰まって観戦も楽しそうです。
例えれば競輪のようなクリテリウム特有のレース勘、駆け引きも、自転車の魅力として貪欲にツアーに取り入れ、しかも心に残るロケーションを提供してくれた主催者に、心底頭が下がりました。

ここまで長く、時に険しく、時に楽しく、また美しくあったルートを乗り越え、老若男女のサイクリストたちが、晴れやかな表情で、最後のクリテリウムに臨んでいます。自転車の楽しさの本質を突き詰めていくと、苦しさという要素がそこに確かにあることに気づきます。この旅の終わりでも、苦しくも、楽しい絶妙な表情をたたえた好男好女がゴールに向けてペダルを踏み込んでいきます。

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“モノより思い出”
またしても何処かで聞いたアレですが、最後に心に残るものこそが、旅の価値を決めると思います。そういう意味でも、プライスレスなツアー・オブ・ニュージーランドでした。

かくして10回にわたったツアー・オブ・ニュージーランド編の幕引きとさせていただきます。ご拝読ありがとうございました。

次回は、閑話休題のショートコラム「ハワイ編」などを挟みつつ、北イタリア、ドロミテサイクリング編(仮ですが)に突入しようかと思います。予定は予定で決定ではない、と逃げ口上を放ちつつ、お楽しみにー!

前回までの「自転車天国」はこちら
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その9
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その8
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その7
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その6
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その5
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その4
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その3
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その2
ツアー・オブ・ニュージーランド編 その1

プロフィール

下城 英悟(シモジョウ エイゴ)
Photo&Videographer/Director。1974年長野県上田市生まれ。2000年より写真と映像兼務のフリーランスカメラマンとなり、各種制作業務請け負う。2010年、神保町にてスタジオGREENHOUSEを設立。自転車をこよなく愛し、専門誌への寄稿、撮影も多数。

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