コラム

[自転車の歴史]フレームの歴史

フレームの歴史

 1879年に初めてチェーンが装着されたビシクレットが登場して前輪は操舵、後輪は駆動と役割が分かれた。その後、1885年にローバー・セーフティが登場して、前後輪の大きさが同じになった。そしてこの頃から、自転車のフレーム形状も前三角と後三角を組み合わせたダイヤモンドフレームが一般的になる。のちにミキストや、スタッガードというアレンジバージョンも派生するが基本はダイヤモンドである。他にも、ママチャリのU字フレームや折りたたみ小径車の一本フレームなどが誕生したが、乗り降りや収納の利便性に重点が置かれており、剛性を確保するために重くなっている。ダイヤモンド型はシンプルにしてベスト。素材は変われども130年以上も継承されている完成形なのだ。

 ダイヤモンドフレームには現在、2つのスタイルがある。ひとつは股下すぐにあるトップチューブが地面と平行なホリゾンタル、もうひとつはトップチューブが手前に向かって下がっているスローピングだ。スローピングにも一見して傾斜が分かるものから、ホリゾンタルと並べて初めて気付くものまで様々あるが、それぞれに長所と短所があって「これが一番」と決められない。かつてはクロモリ(鉄)の細いチューブで組まれたホリゾンタルフレームがロードバイクの主流だったが、最近はアルミ大径チューブやカーボン変形チューブが主流となり、マウンテンバイクの影響を受けてスローピングフレームが勢いを増している。スローピングの方が剛性を高くできて、パワーロスが少ない。シートポストを長く出せるので脚が長く見える利点もある。反対に振動吸収性はホリゾンタルに軍配が上がる。疲れにくいので、ロングライド向きと言われる所以だ。

 建築やデザインの世界では黄金比の存在が知られており、意識して取り入れられて来た。従来、自転車は機能優先でデザインは二の次だったが、デザインという言葉には本来、使い勝手も含まれている。見た目は良いが使い勝手が悪いなら決して良いデザインとは呼べない。幸いにして、ホリゾンタルとスローピングの違いは一般人にとって大きな差を生まない。と言うことは、見た目を重視して選んでも問題ないということだ。往年の愛好家に大径チューブは不評だが価値観は時と共に変わる。逆に昔ながらの細いチューブをホリゾンタルに組んだTOKYO BIKEが新たなファンを生み出している。現代は選択肢が多く、お気に入りの1台を見つけやすい良い時代だ。ずっと昔に完成してしまい、変化に乏しいフレームの常識を覆すような形状はこの先、登場するのだろうか? すでにシートチューブのない自転車は登場している。今後クルマのエンジンには樹脂が使われるらしい。自転車フレームの進化も楽しみに待つとしよう。

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TOKYO BIKEウェブサイトより

前回までの「自転車の歴史コラム」はこちら
第9回 折りたたみ自転車のルーツと今後のポテンシャル
第8回 空気入りタイヤという大発明
第7回 コンポーネント(コンポ)の誕生
第6回 ツール・ド・フランス黎明期の自転車とは
第5回 自転車文化は一日にしてならず
第4 回 マウンテンバイクがやってきた
第3回 ジュニアスポーツ車は永遠に
第2回 ジュニアスポーツ車が遺した技術
第1回 ジュニアスポーツ車とは、いったい何だったのか?

内海 潤内海 潤(うつみ じゅん)NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長株式会社エクスゲート 代表取締役東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」がある。