コラム

[自転車の歴史]自転車の駆動方式について

自転車の駆動方式について

 約200年前、最初の自転車ドライジーネは地面を蹴って進んだ。1860年前後にピエール・ラルマンがペダルを発明、それがミショー型の前輪に装着されて自転車はペダルを回して進む乗り物になった。それから20年内外でチェーンが開発され前輪は操舵・後輪が駆動となる。初期のチェーンは幅が1cm以上あって見るからに重量級だが現代まで続く画期的な発明のひとつであり、やがてクルマや産業機械へと幅広く普及して行くことになる。自転車の駆動方式には他にもベルトやシャフトがあるが、現在チェーンが圧倒的シェアを占めている。なぜだか、ご存知だろうか?

Early-Chain
t鉄製の重そうなチェーンを装備。昔の人の健脚ぶりが目に浮かんできませんか。

 理由はいくつもある。まず大きい要因として伝達率が挙げられる。スポーツバイクに多く装着されている外装式ギアスプロケットとチェーンの組み合わせだと、シャフトドライブと違いペダルを踏む力の向きが伝達経路の途中で変換されず、ほぼ100%が推進力に変換される。人間がエンジンである自転車でパワーロスの少なさは極めて重要だ。次に挙げられるのが汎用性の高さ。フレームサイズやギアの大小に合わせ、最適な長さに調整しやすい。アウター×ローなど、たすき掛け(斜め)になる組み合わせは伝達率が落ちるので推奨されないものの外れてしまうことはない。さらには耐久性の高さがある。定期的なメンテナンスを怠らなければ長期間・長距離の走行に耐えられる。経済性も魅力だ。中には高価な物もあるが、基本的にマスプロ工業製品なので廉価で入手でき交換作業も慣れればユーザー側で可能。チェーンにはザッと挙げただけでもこれだけのメリットがあるため、長年にわたり駆動方式の中心を担ってきた。

shaft-drive-bike
シャフトドライブの自転車

 では、チェーンに死角がないかと言えば当然あって油を切らすとスムーズに回らなくなる上にサビが発生して極端に伝達率が落ちる。逆に油分が多いと埃や髪の毛などが付着しやすい。清掃および注油といった定期的なメンテナンスが欠かせないのだ。また触ると黒く汚れるというデメリットがある。白っぽい衣類だと汚れが目立つので、自転車に乗るなら濃色系に限る。実はすでに、それらの欠点を補い、かつ高い耐久性やパワーロスの少なさを兼ね備えた商品が登場していて、じわじわと存在感を増している。カーボンベルトがそれだ。

 ベルトは以前からあったが、カーボン心線だと伸びも少なくチェーンと遜色ない耐久性を誇る。まだ高価なのが玉に瑕だが、普及すれば値下がりするはずだ。注油が要らないので油汚れとは無縁。切ったら再び繋げないのでフレームを選ぶが、内装変速機と組み合わせてスポーツ走行も可能だ。音も静かで軽く、メンテナンスフリーとメリットが並ぶ。総合力で当面チェーン優位は揺るがないが、将来ベルトが繋ぎ直せるようになったら、その地位も危うくなる。歴史では先に登場したペダルが残りチェーンは消滅する時代が来るかもしれない。

前回までの「自転車の歴史コラム」はこちら
第10回 フレームの歴史
第9回 折りたたみ自転車のルーツと今後のポテンシャル
第8回 空気入りタイヤという大発明
第7回 コンポーネント(コンポ)の誕生
第6回 ツール・ド・フランス黎明期の自転車とは
第5回 自転車文化は一日にしてならず
第4 回 マウンテンバイクがやってきた
第3回 ジュニアスポーツ車は永遠に
第2回 ジュニアスポーツ車が遺した技術
第1回 ジュニアスポーツ車とは、いったい何だったのか?

内海 潤内海 潤(うつみ じゅん)NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長株式会社エクスゲート 代表取締役東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」がある。