コラム

[自転車の歴史]ハンドルの歴史

ハンドルの歴史

 運転中に体重を支える3点のパーツ、つまりペダル、サドル、ハンドルには、偶然すべて「ル」で終わる名前が付いている。操舵装置は軌道を持たない乗り物に不可欠な重要パーツで、進む方向を決めるだけでなく、バランスを取り、体重を支え、全身の力を引き出す支点にもなる。前後2輪の自転車は止まったままだとバランスを取るのが難しい。交差点でハンドルを微妙に左右に振って乗ったまま信号待ちをしている人を時々見掛けるが、本来はカーブでジャイロ効果を活かし身体を倒して曲がれるようになっており、それが3輪車や4輪車では決して味わえない醍醐味となっている。

 ハンドルほど時代の変化に敏感なパーツはない。世界初の自転車には木製のハンドルが付いていたが、やがて鋳鉄になり、鉄パイプに代わった。軽さを求めてアルミに、そしてカーボンへと進化してステム一体型など複雑な形状でも作り出せるようになった。

 時代のアイコンとなったハンドルもある。例えばジュニアスポーツ車のセミドロップハンドルしかり、その後のカマキリに代表されるシティサイクル車のハイライズハンドル等である。特にセミドロップハンドルは曲げの角度や長さを変えてスタイリッシュにリメイクすれば現代でも十分カッコイイだろう。

セミドロップ
写真提供:自転車文化センター
懐かしのジュニアスポーツ車のセミドロップハンドル。
ジュニアスポーツの歴史はこちらから

 競技用自転車は必要とされる機能を持たせるためにハンドル形状を変化させて来た。ロードバイクには一般的にドロップハンドルが採用されているが、これは長距離走行時の疲れを軽減する目的で複数箇所を持ち分けられるように工夫されたものだ。単にドロップハンドルと書いたが昔のシャロー(丸ハンドル)からアナトミックへ、更にアナトミックシャローへと次々に進化して来ている。現代ではタイムトライアルレース用のエアロバー付き空力ハンドルだって珍しくなくなった。また、初期のマウンテンバイクにはBMXと同様にクロスバーの付いたアップハンドルが付いていたが、次第にストレートハンドルに変化した。よりダイレクトな操作感が求められたからだ。

Beach cruiser isolated on white
ゆったりと乗るスタイルに合わせたビーチクルーザーのハンドル

 一方で街乗り用ではビーチクルーザーハンドルのように、ゆったり乗るには最適な物やバタフライハンドルのように持つ場所が多い派生種も登場したし、最近ではシマノが「メトレア」というアーバンスポーツのコンポを発表したばかりだ。従来ブルホーンハンドルにSTIレバーを装着するのは問題が多かったが、メトレア専用のHタイプハンドルに装着すればブルホーンでSTIレバーが違和感なく使える。まだ出たばかりでツッコミ所は残るものの、ロードバイクは数が増え過ぎたから別な物を探していた、という方にメトレアはオススメだ。

metrea2017年製品にラインナップされたメトロアーバンスポーツ「メトレア」
Photo via:http://bike.shimano.com/content/sac-bike/en/home/news-and-info/news/metrea-new-style-for-urban-sports-riders.html

これだけ多種多様になるとハンドル形状で自転車を選ぶのもアリだと思う。

前回までの「自転車の歴史コラム」はこちら
第13回 サドルの歴史
第12回 ペダルの歴史
第11回 自転車の駆動方式について
第10回 フレームの歴史
第9回 折りたたみ自転車のルーツと今後のポテンシャル
第8回 空気入りタイヤという大発明
第7回 コンポーネント(コンポ)の誕生
第6回 ツール・ド・フランス黎明期の自転車とは
第5回 自転車文化は一日にしてならず
第4 回 マウンテンバイクがやってきた
第3回 ジュニアスポーツ車は永遠に
第2回 ジュニアスポーツ車が遺した技術
第1回 ジュニアスポーツ車とは、いったい何だったのか?

内海 潤内海 潤(うつみ じゅん)NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長株式会社エクスゲート 代表取締役東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」がある。