コラム

[自転車の歴史]ツール・ド・フランスにまつわるお金とドーピングの話|自転車レースの歴史

ツール・ド・フランスにまつわるお金とドーピングの話|自転車レースの歴史

 1月末「チーム・スカイが機材ドーピングしたのでは?」というニュースが飛び込んできた。まさか…あり得ない。発信源はアメリカの有名テレビ番組「60minutes」とのこと。かつて、ランス・アームストロング選手のドーピング疑惑を取り上げ、後に自白へと追い込んだ番組である。気になってネットで検索したが、どうやら今回はデッチ上げのようだ。ちょうど一年前にベルギー人・女性シクロクロス選手の機材ドーピングが発覚したばかりではないか。今さら機材ドーピングなんて出来る訳がない。主催者側としては何としても疑惑が再浮上しないよう抜き取り検査を強化して未然に防いでいるはずだ。それだけASOは過去の黒歴史を払拭しようと躍起になっているのだから。

 チーム・スカイがバッシングに遭いやすいのは理解できる。憎らしいほど強いからで、2015年にはクリス・フルーム選手が「ドープ!(ドーピング野郎)」と罵られて尿をかけられる事件が起きたが、物ともせず見事に総合優勝を果たした。そして昨年は魅せる走りで貫禄の連覇を達成。相変わらずブーイングは出るものの一時より収まったかに思えたが、ここに来てまたこの騒動である。フランス人サポーターが怒る気持ちも分からないではない。たびたび訪日する「陽気なおじさん」ベルナール・イノー氏が1985年に総合優勝して以来、地元フランス選手が勝てないからだ。たとえ勝てなくても、ショーとして見せ場を作る選手であれば許せるかもしれない。その点で昨年のフルームは見事だった。もちろん、彼一人の力で勝ち取った総合優勝ではないが。

 総合優勝したら一体幾ら賞金をもらえるのか。規定では45万ユーロ(約5,700万円)となっている。総合優勝以外にも細かい賞金規定があり、これで終わりではないが印象としては少ない。レース賞金は選手にとって収入の一部なのだ。トップチームともなるとビッグスポンサーが付くので選手たちに多額の契約金が入る仕組みになっている。グランツールで活躍すれば翌年も安泰だ。1レースだけ見れば大した額ではないが、いいイメージが定着すれば収入源は広がる。例えばCMに出演すれば更に跳ねる。大きなレースで勝つと賞金だけでなく、その他の収入も飛躍的に増えるので選手たちは必死に頑張るのだが、ドーピングが発覚すれば全て水の泡になる。とりわけチーム・スカイほどの名門チームならば、今回の報道のような疑惑が起きないよう細心の注意をしているはずだ。

 結果クロとならないよう願っているが、ランスがツール7連覇を剥奪されたのは引退後7年経った2012年になってから。今回の疑惑に限らず、過去にはUCIやWADAが証拠をつかみつつ断罪しない(賄賂など諸説あり)こともあったので、結論が出るまで時間のかかることは覚悟しておいた方がいい。

前回までの「自転車の歴史コラム」はこちら
第17回 今も昔も早く走れるだけでは勝てません。|自転車レースの歴史
第16回 ツール・ド・フランスは奴隷のレース!?|自転車レースの歴史
第15回 自転車がタイトルに入る法律の歴史
第14回 ハンドルの歴史
第13回 サドルの歴史
第12回 ペダルの歴史
第11回 自転車の駆動方式について
第10回 フレームの歴史
第9回 折りたたみ自転車のルーツと今後のポテンシャル
第8回 空気入りタイヤという大発明
第7回 コンポーネント(コンポ)の誕生
第6回 ツール・ド・フランス黎明期の自転車とは
第5回 自転車文化は一日にしてならず
第4 回 マウンテンバイクがやってきた
第3回 ジュニアスポーツ車は永遠に
第2回 ジュニアスポーツ車が遺した技術
第1回 ジュニアスポーツ車とは、いったい何だったのか?

内海 潤内海 潤(うつみ じゅん)NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長株式会社エクスゲート 代表取締役東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」がある。