コラム

[くるくる写真塾]第5回 ロケーションハンティング

第5回 ロケーションハンティング

前回、前々回とピントとボケのはなしが続きましたので、閑話休題、今回はロケハンのはなしをしましょう。

前回までの「くるくる写真塾」はこちら
第4回 ボケとピントのはなし~その2~
第3回 ボケとピントのはなし~その1~
第2回 “自撮り”派サイクリスト
第1回 ようこそ「くるくる写真塾」へ!

ロケハンとは、ご存知「ロケーションハンティング」の略語です。直訳すれば“場所狩り”ですが、つまり場所探しのことでしょうか。
写真や映画/映像業界で多用される言葉として、もはや業界用語の響きをもって知られるところですが、写真撮影の前提作業として、とても大切な意味を持つ作業です。
一枚の写真のイメージの強さを決定付けるのは、端的に言えば、2つの要素。それは“どこで”、“なにが”うつっているのか、ですので、ロケーションハンティングとは、この"どこで”=場所=ロケーションを見つけ出す大切な行為と言えます。

写真は2次元/平面表現の芸術で、たとえば絵画の一種といってもいいでしょうが、絵のような空想創作は出来ませんし、想い描いた妖精や妖怪も、もちろんポケなんとかも写真には写ってはくれません。(強く願えばわかりませんが、一般的に無理とされています)
目の前で起こっている現実しか写らない、というのが写真の原則で、はるか北極のホッキョクグマは、当たり前ですが日本でいくらシャッターを押しても写真に写らない。撮りたければ、クマのいる場所=ロケーションの北極まで実際に行くしかないのです。
わざわざ簡単なことをややこしく言っていますが、写真には、場所がとっても大事なんだと伝えたいがためです、ご容赦を。そのためロケハンとは、一枚の写真のために“場所”を確認し、下調べする作業です。

しかし、一枚の写真のためにわざわざ時間を割いてロケハンをする意味とは?仕事じゃあるまいし、撮りたい場所があったら、その場ですぐ撮ればいいだろう…?
そんな意見も聞こえてきそうです、ごもっとも、当然だと思います。

ところで、少し考えてみましょう。以下にあげるひとつひとつのシーンを写真で思い浮かべてみてください。
青空にもくもくと湧き上がる夏の入道雲。風になびく緑濃い草原。砂漠でほほえむ少女。入り組んだ都市の雑踏。路上のアスファルトに潰れたコーヒー缶。八百屋のおばさん。魚屋のおじさん。夕方の街角に抱き合う男女。机の上の林檎ひとつ。
ありそうな写真的心象風景なので、ひとそれぞれに思い思いのワンシーンが浮かんだことと思います。もし、思い浮かんだ写真を、実際に撮りたくなったとした場合、どれも“どこ”で撮る?という条件が必要になってきます。
写真を撮りたくなったときには、“場所=ロケーション”がどうしても必要なのです。そして、ひとそれぞれに理想のロケーションがあるものです。

北極にクマの勇姿を求めるロケハンは並大抵ではないですが、こころに思い描いた実現可能なテーマを求めてロケーションハンティングするのは簡単でしょう?
たとえば、かつて通った小学校の校舎を撮りたいな…、綺麗に夕日に染まるのは何時なんだろう?廃止されたSLが走るみたいだ、どこがカッコよく撮れるだろ?
>撮りたい写真を撮るために、ロケーションをハントして写真の構想を温め、何度も通って季節や時間帯を変えた写真をたくさん撮っていけば、自分の中の写真の引き出しもどんどん豊かになっていきます。
迷わず行ってみましょう、いや、迷っても行ってみましょう、ロケーションハント。
そこに自転車があれば、鬼に金棒だと思います。

<一口メモ>

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写真は筆者が高校時代から愛を込めて通う台湾スイーツの店、もとい写真的ロケーションにして、被写体の“愛玉子”の店。はじめて出会った20年以上前から変わらぬインパクト、そして、オーラをまとって、いまだに写欲をソソります。

こういうお気に入りの建物やお店などの撮り方として、まずは正面から向き合って撮ることを推奨します。構図を考え込んだり、小細工はひとまずせず、被写体と正対して写真を撮りましょう。それは写真における挨拶のようなものと考えます。はじめまして、被写体さん。工夫や応用は、あとからいくらでも出来ます。まずはまっすぐ向き合って。人間に対しては言わずもがなです。まっすぐから始め、被写体をよく観察しながら、よりよい撮影法の工夫も見出しやすくなります。

まっすぐ正面で捉える構図は日の丸構図などと言われ、工夫のない構図として揶揄されることもありますが、綺麗にまっすぐ構図を作ることは、実はとても難しく、習得に時間もかかるものだと思います。皆さんもロケハンでいいテーマに出会ったら、まずはまっすぐご挨拶(つまり、撮影)を忘れずにお願いします。

プロフィール

下城 英悟(シモジョウ エイゴ)
Photo&Videographer/Director。1974年長野県上田市生まれ。2000年より写真と映像兼務のフリーランスカメラマンとなり、各種制作業務請け負う。2010年、神保町にてスタジオGREENHOUSEを設立。自転車をこよなく愛し、専門誌への寄稿、撮影も多数。

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