コラム

[くるくる写真塾]第11回 ロケ地巡礼。

第11回 ロケ地巡礼。

写真が好きな人は、映画や漫画、アニメなんかも好きな方が多いように感じますが、皆さんはいかがでしょうか。
私なども例に漏れずな“そっちのクチ”です。みな同じ視覚文化芸術と捉えれば、至極当然のこと。目で見て愉しむ芸術は、すべて繋がっていると言って差し支えないでしょう。

さて、映画などを見ていると、当然ながら様々なロケーションが出てきます。
劇映画は、“劇”、つまりフィクションで、架空の世界のお話ですが、制作段階の撮影現場というのは当然現実世界で行われていて、絵コンテや、イメージボードの連なりだった物語を、制作スタッフがロケーションハントを繰り返し、苦心に苦心を重ねて撮影ロケーションを決めていきます。

ロケハンは、より魅力的な映像・画像を編み出すのに欠かせない作業で、作品の質に大きく関わる大事な要素なのです。そして、良いロケーションというのは、物語と画に強度と耐久性を与え、見る人の想像力を掻き立ててくれるものだと思います。

毎度の怪獣での例え話ですが……、モスラが東京タワーでなく、ただ地面に繭を作っていたとしたら、あれほどの物語のインパクトを持つことはできなかったでしょう。例えば、ゴーストバスターズのマシュマロマンがニューヨークの市街地に現れていなかったらどうでしょう? タイタニック号の舳先で、あの有名なロマンスシーンが撮影されていなかったら?
我ながら拙いB級な例えばかりで申し訳ないですが、つまり、名作とロケーションというのは切っても切れない相関関係にあるのです。

以前、くるくる写真塾でもロケーションハントの話をしたことがありました。好きな映画のロケ地を撮影して回る、これもある意味ロケーションハントの楽しみ方だと思い、今回改めて取り上げてみました。

さすがにタイタニック号を撮影するのは難しく、実際は映画セット。でも映画や漫画のロケーションの中には、実際の土地が舞台になっているものが数多くあって、最近は映画ファンのロケ地巡礼は話題になることが多くなっているようです。

日本映画の不朽の名作として、世界的にも愛される小津安二郎監督の「東京物語」(’53)という映画があります。主な舞台は、東京、尾道、熱海。各地の何気ない景色を背景に描かれる、家族の綾なす葛藤や絆が、とても心に沁みる名作です。戦後間もなくして封切られた映画ですが、ロケ地はその名残を残しているものも多く、幾度か巡ったことがあります。

ロケ地の多くは50年以上経って景観を変えていますが、今でも名残を感じることができました。カメラを構えて見ると、派手な絵では決してないですが、映画の中の素朴な風景が、じんわりと滲む写真が撮れます。好きな映画と少しだけ一体になるような時間を体験できたりして、好きな作品がさらにグッと近くなった感覚がします。
こういうのも、写真の楽しみ方の一つだと思います。

いつもの撮影とは趣を変えての、ロケ地巡り、いかがでしょう?
そしていつものように、自転車があるととても便利です。

※ロケ地は私有地や、そうでなくても公共共有地である場合もあるので、マナーを守って撮影を楽しみましょう。

前回までの「くるくる写真塾」はこちら
第10回 “壁”に対峙する。
第9回 まだ見ぬ道へ
第8回 旬の写真を味わう
第7回 ライドイベントのススメ
第6回 アングルのはなし
第5回 ロケーションハンティング
第4回 ボケとピントのはなし~その2~
第3回 ボケとピントのはなし~その1~
第2回 “自撮り”派サイクリスト
第1回 ようこそ「くるくる写真塾」へ!

<一口メモ>

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写真は、豊島区高島平団地。高度成長期に建てられた当時最大級のマンモス団地です。その大きさや、機能、導線などその後増えていく日本の団地のスタンダードモデルともなりました。その象徴性から様々な映画や漫画の舞台としても採用されてきました。アニメ『AKIRA』で名高い漫画家の大友克洋さんの名作「童夢」は、この団地がモデルと言われています。団地で繰り広げられるサイキックな超能力バトルは、80年代を象徴する漫画として、その後の氏の大名作『AKIRA』の雛形になったと言われています。今となっては昭和を偲ばせ景観に誘われ、自転車で度々通っています。